dameningendx2をフォローしましょう

フセイン・チャラヤン展2010/05/27 07:34

東京都現代美術館で開催中。
6月20日(日)まで。
 
前にもこの人の作品は同じ美術館で見たことがあるのですが,興味
を持ったのは,「video dresses」という,服にLEDをちりばめた作品。
自分も単純なものながら,LED電飾のシャツを着て走ったりしてお
りますので,どんなものなのか間近で見たいと。
実際見てみると,布地の裏にはかなりごっちゃりと電子回路がひし
めいており,こりゃえらいもんだと感心しましたが。
今回改めてじっくり観察してみました。
これ↓の右側の作品が展示してありましたが。
 

 
ただちかちかしているだけでなく,「video dresses」という言葉の通り,
映像が映し出されるようになっている。
ま,それだけと言えばそれだけなのですが,裾から覗き込んで(傍で
見ていたらかなり怪しいおやじだろうが)構造を見ると,光をうまく反射
させる工夫が見え,アイデアはシンプルでも,かたちにするのはなか
なか難しいことがわかる。
さて,これが私の電飾ウエアの今後に向けて,どう参考になるのかは
全くわかりませんが,金と英知と技術があれば,このレベルのものは
できている訳で,いつまでも同じものを着ていないで,発展させていか
なければならんだろうと決意を新たにしました。ってほど大げさな話で
はありませんけど。
同列に扱われたらフセイン・チャラヤンも迷惑だろうけど。
 
会場に入ると,なにやら工場のような騒音。
非常にうるさい。
なんだろうと思ったら2009年の春夏コレクションで発表した,「Silicone
Dresses」という作品に風を当てている。
そのファンの音だったんですね。
「Silicone Dresses」だけの映像が↓。
 

 
その時のコレクションのフルバージョンが↓。
 

 
この人で有名なのは,2007年の春物コレクションでしょうねえ。
こちらでも前に書いたことがあるかもしれない。
まあオチがえらいことになっていて,驚かされましたが。
↓です。(全裸注意)
 

 
ギミックの面白さは勿論ありますけれども,それだけに終わっていない
のは,この人が自然現象や物理法則,社会情勢などを敏感に肌で
感じ取っているからなのでしょうか。
ばーっと見ていきましたら,「風」,「重力」なんていうキーワードが出て
くるんですね。
最近また日本人が宇宙に出て行きましたが,宇宙空間では,我々の
当たり前が全く通用しない。
理屈ではわかっているつもりでも,実際に宇宙空間にいる人の映像
などを見ますと,地上では気にしなくていいことが極めて問題になる
ということを思い知らされます。
服装で言えば,女性はスカートなんか穿いていられませんね。
天地がはっきりしていないと人間は途端に具合が悪くなってしまいま
す。
「風」で言えば,空気抵抗というのは,スピードが遅ければそれほど
問題にならない。スピードが上がってくると,ぐいぐい抵抗が強まる。
速く空気中,或いは水中を突き進む必要のある物体は,所謂流線型
のような抵抗の少ないかたちにしないとうまくいかない。
それを我々は理屈抜きでイメージとして理解できる。
そうなると,ぱっと見て「速そうなかたち」というのが出てくる。
実際に速く動かなくても,「速そう」だとか,動きを感じるかたちという
ものがあります。
我々の持っている感覚をうまいこととらえて,刺激しているのかなあと。
それは逆手に取るパターンも含めてですね。
その辺が鋭いのかなと。
また,ストーリー性があります。
この人はファッションデザイナーという枠からむにむにとはみ出てい
て,映像作品もあります。これがまた不思議な魅力のあるもので。
その才はコレクションのステージでも発揮され,一味違った演出がな
されますねえ。
1998年の秋物なんかは緊張感が張り詰め,異次元の世界のようで
あります。
 

 
デザインはシンプル。民族衣装的でもありますが,結局どこに属する
のかはわからない。
個性的と言えば個性的なのだが,それゆえむしろ没個性になっていく。
言葉を封じられ,ステージに設置された鏡の間に立つことにより,その
没個性は無限に増殖し,その影に混ざり,溶け込み,希薄になってい
く。
実はこの↑映像では省かれているようですが,ついには口を塞ぐヘッド
ギアみたいなものだけの全裸になってしまうのですね。
のけぞります。
興味ある方は1998年のコレクションということで画像検索でもして
みて下さい。
(※後日注 また間違い。全裸になってしまうのは春夏のコレクション
でした。失礼しました。だから↑の映像に出てくる訳はなく,当然省か
れておりません。訂正します)
まあとにかく抜群に面白かったですね。
大いに刺激になりました。
ここまできたら最近のも出しておきましょうか。
2010年の春夏。
 

 
ちょっと昔のイメージでしょうか。
前に出した98年,07年なんかのぶっ飛び具合からすれば物足りなく
感じるかもしれませんけれど。
最後に出てくる,髪を薄い布で覆っての白いドレスなんかは実物が
ありましたけど良かったですよ。美しい。
肩のところは手の形になっていて,パンフレットによるとよじ登る上昇
志向と野心を表現しているのだそうです。
私よりちょっと若いぐらいらしいので,この先更に面白いものを見せて
くれるだろうと,楽しみなアーティストの一人であります。
 
フセイン・チャラヤン- ファッションにはじまり、そしてファッションへ戻る旅
 
東京都現代美術館
~6月20日(日) 10:00~18:00 大人1200円
http://www.mot-art-museum.jp/index.html