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寝ずの番2006/05/27 00:07

映画といえば,今なら「ダヴィンチコード」なんでしょうけれ
ども,そっちはしばらく置いときまして,「寝ずの番」。
もう公開終了になるのかな。
なにしろ,裸や暴力シーンなど一つもないのにR15指定と
いう映画ですので,後にテレビで放映することもなさそうだ
と。
DVDを売ったりはするのでしょうけれども,とりあえず見て
おくかということで行ったんですけどね。
原作も読んでまして。
 

 
まあ六代目笑福亭松鶴とその一門がモデルということで。
かつて「パペポTV」という番組がありましたが,その中で
笑福亭鶴瓶師が語っておられたエピソードそのままの
話もありますし,↑の文庫本の解説では,去年亡くなった
桂吉朝師が,「あの中のエピソードをしゃべったのは我々
だ」とも書いてあります。
だから松鶴一門の話ではないものも含まれているのかも
しれませんし,中島らもさんの創作の部分も勿論あるで
しょう。
例えば,実際に松鶴師匠に落語の稽古をつけてもらえな
かったのは鶴瓶師なはずですが(お願いしたら「いやや」
と言われたとご本人が語っておられた),「寝ずの番」原作
では一番弟子の橋次になっており,映画では二番弟子で
師匠の実子の橋弥に振り替えられている。
そんな感じで,いろいろ変えてあるところもあり,原作を
読んでいるとかえって頭がこんがらがったりもするのです
が,全体の雰囲気としては原作の空気が出ていたのでは
ないかと思います。
ただまあ,生意気なことを言いますが,個々の役者さんは
それぞれ上手いのですが,なんだかかみ合っていないよ
うな感じは受けました。
もっと下ネタをたたみかけてきて,大爆笑の渦で終わるの
かと思っておりましたが,思っていたよりも人情噺になって
おりましてね。
中井貴一さんなんかは上手すぎというか真面目すぎという
か。
そんなに涙ぐむような場面じゃないのに,中井さんの芝居
の上手さに引き込まれてついほろっときてしまったり(笑)。
ちょっと余計というか過剰というか。
もっとあっさり軽くでもよかったんじゃないかなあと,私な
どは思いますが。
まあ葬式の映画ですからね。しょうがないっちゃしょうが ない。
それにしても中井貴一さんはいいノドしてて上手かったで
すねえ。
堺正章さんと歌合戦をするシーンがありますが,堂々たる
もんで,実に素晴らしかった。吹き替えじゃないらしいです。
木村佳乃さんもかわいかった。今までそんなに注目して
いませんでしたが,今後は要チェックだ(笑)。
あと久しぶりにイーデス・ハンソンさんを見ましたよ。
びっくりしたなあ。
私が小学生の頃,よくテレビに出ていて,不思議な関西弁
でしゃべっておられましたが,ちょっとシワが増えたぐらい
のもんで,あのままでした(笑)。
お元気そうで,なんかちょっと嬉しかったな。
 
しかしこれ,テレビじゃ流せないよなあ(笑)。
タイトル前に既に「おめこ」ですからね。
セリフの中にぽつぽつ出てくる分には「ピー」でもいいかも
しれませんけど,後半の歌合戦のところなんかは「ピー」
を入れてたらなんだかわからなくなってしまう。
放映前にことわりを入れてそのまま流すか。
WOWOWはやるかな。
むしろNHKの方があっさりやったりして。どうかな(笑)。
 
落語家の葬式ということで,私も一度だけそういう場にい
たことがありますが,確かに普通では考えられない様相
を呈しますね(笑)。
不思議な感じですが,悪い気はしません。
みんなでバカバカしく酒を飲んで爆笑の葬式っていいもん
ですよ。
悲しみは一人一人が飲み込むということで,つらさもあり
ましょうが,そういう風に見送ってくれる仲間がいるっての
は幸せなことだと思います。
死ぬ方がそれなりの生き方をしてなかったらまあちょっと,
ということも勿論ありますが。
 
この映画の一つのハイライトに,「死人のカンカン踊り」と
いうのがあります。
落語の「らくだ」の中にそういう場面がありますが,それを
死んだ師匠に実際にやって頂こうと。
このシーンをどうするんだろうと,ここは一番の興味だった
のです。
適当にお囃子をつけて踊るのかなあと。
それはちょっと残念だなあとか。
その場面がきたら,ちゃんとやってましたね。
「かんかんのう,きゅうのれす♪」ってあれを(笑)。
これは嬉しかった。このシーンだけでもこの映画は価値が
あります(笑)。
「らくだ」って元々上方の噺だと思うのですが,こちらでは
あまりフルサイズで演じる方はおられないかと。
1時間ぐらいありますからね。寄席では全部はできない。
だからかいつまんでやるので,この「かんかんのう」の場
面なんかも一節ぐらいで流していっちゃう。
一度たっぷりあの訳のわからない歌詞のままのを聴いて
みたいと思っておりましたが,ちょっと違う形にしてもそれ
が叶って少し納得しました。
内田百閒の作品の中でも「かんかんのう」を歌う場面が
あるのですが,あれはきっと三代目小さんの「らくだ」を
見たんじゃないかと推測しています。
まあそんなある意味マニアックなくすぐりもありまして,なか
なか楽しめる映画でございました。