ヘンリーダーガー 少女たちの戦いの物語━夢の楽園 ― 2007/07/15 11:13
一時,このブログに接続できませんでした。
原因はわかりませんが,こちらに限らず,ASAHI
ネットのブログ全般が開かなかったので,何か問題
が生じたか,メンテナンスでもしていたか。
なにしろ大変失礼致しました。
えーと,ヘンリー・ダーガー。
品川の原美術館でやっておりまして。
今回の展示は,まあおとなしい方のようですが,それ
でも何か不気味さというか,奥に潜む暗黒面は感じ
られます。
私が説明するのもどうかと思いますが,簡単に申し
上げますと,まずこの方は不幸な境遇で育ったのだ
そうです。
1892年生まれ。
3歳で母親が死去。
その後父親も患い,8歳でカトリック系の施設に入所。
更には感情障害の兆候をきたし,重度の精神遅滞
児童のための施設に収容されたとパンフレットにあり
ます。
ただ小さい頃の成績は良かったらしく,所謂知恵遅れ
ではなかったようです。
心を閉ざしてしまったのでしょうか。
17歳で施設を脱走。
簡単な労働をしつつ,言ってみれば引きこもりの人生
を81歳まで貫いたようであります。
少女に対する執着が強い。
これは,母親が出産で命を落としたらしく,その時生ま
れた妹は養女に出されたと。
その妹への思いに起因するのではないかとも考えられ
ているようです。
ま,なにしろ,1万5千ページに及ぶ「非現実の王国と
して知られる地における,ヴィヴィアン・ガールズの物
語,子供奴隷の反乱に起因するグランデコーアンジェリ
ニアン戦争の嵐の物語」というお話を書いた。本文だけ
でなくタイトルも長いですが。
とにかく書いた。
発表もなにもしていない。
そして,この物語をどうしても図解したくなったようです。
ところがまあ,いきなり絵を描くというのも大変だ。
そこで新聞や雑誌などのイラストや写真を収集し,それ
らをトレースして構成するという手法を採った。
今回展示されているのは,その絵の一部です。
輪郭線が完全にトレースの線でしてね。
間近に見て驚いたのですが,結局はトレースだろうが
なんだろうが表現したかったという気持ちが凄いなと。
ま,とにかく絵もたくさん描きました。
そのために,街をうろつき,新聞や雑誌などのゴミを
集めたそうです。
絵も勿論,発表するでもない。描きたいから描いた。
ダーガーは晩年老人ホームに入ったそうですが,その
時それまで住んでいた部屋の大家がこれらの作品を
見て驚いたと。
その大家さんはネイサン・ラーナーという写真家でもあ
る人ですが,こういう人が大家さんでなかったら,もっと
雑な人であったら,妙ないたずら書きぐらいにしか思わ
ず,あっさり捨てられていたかもしれません。
このラーナー夫妻によって,本人の意思と関係なく,
ダーガー作品が世に出たと。
まあそういうことでございます。
さて。
ヘンリー・ダーガーの絵について語る時,皆さんお書き
になるので書きたくはないのですが,避けて通る訳にも
いかんという事柄。
なにしろ少女の物語なので,絵にも少女がたくさん出て
くる。
全裸であったりもする。
その少女に何故か男性器が付いているという問題。
まあカトリック系の施設にも入り,まず敬虔なクリスチャ
ンであったようです。
その上やや変わった人でもあったようなので,女性器
を知らなかったのではないかという話が出てきます。
まあ生の全裸女体は見たことがなかったかもしれませ
んが,体の構造は流石に知っていたのではないかと。
じゃあなんで女の子にちんぽを生やすかと。
これがわからない。
うんと子供の頃,まだ性が未分化の幼児の頃,そういう
空想をしたのでしょうか。
普通は思春期になりますと,そのような小さい頃の空想
は吹き飛び,現実の女性器に向かって突き進むもので
すが。
まああまり女性に声をかけることもなさそうな人なので,
実際の女性の構造を知識として知った後も,子供の頃
自分が空想したイメージの方が良かったのかもしれな
い。
大人になってからも捨てられない空想だったのかもしれ
ない。
またダーガーの描く全裸少女の全てにちんぽが生えて
いる訳でもない。
となると物語の上での役柄で違うのかもしれない。
そこは物語を読んでませんのでわかりません。
結局謎だ。
例えば私がちんぽ付きの少女を描いたとしたら,皆さん
「あー,両性具有を描いたのね」とあっさり納得してもら
えることと思いますが,作者の人となりが人となりだと
いろいろ話がややこしくなります。
↓のページでいくつかダーガー作品が見られます。
http://www.hammergallery.com/Artists/darger/Darger.htm
ダーガーの描く少女は,なにしろ昔のアメリカの写真や
イラストが元ですから,レトロな感じもあり,「オズの魔法
使い」を髣髴とさせるような世界観なのですが(内容は
全く違いますが),そこは特異な境遇を辿ってきた人物
だけあって,明るく描いていても何かグロテスクであった
り,むしろ奇異さが引き立つ感じもします。
コラージュ作品などはそれが顕著で,愛らしい少女の
表情が一層ダーガーの心の闇を引き立てているように
思えます。
グロテスクでも,ヤン・シュヴァンクマイエルの場合は
ユーモアもあり,大人としてすんなり受け入れられます
が,ダーガー作品の場合は仮にユーモアの部分がある
としても,こちらの胸に突き刺さってくる痛みを感じます。
それにしても,おそらく発表するという発想すら全く無か
ったのでしょうねえ。
誰かに見せることもしなかったようです。
大家さんはずっと足の悪い老人としか見ていなかった
そうで。
ある衝動が起き,それを実行した。
つまり物語を書きたいから書き,絵も付けたいから描い
た。
本人の中では見事に完結しております。
これ以上でも以下でもなく,極めて純粋だ。
小説家になりたい,画家になりたいというのではないん
ですもんね。
自分にとって必要なことをしただけ。
こういう人もいるんですねえ。
変な言い方かもしれませんが,ちょっと勇気を貰いまし
た。
いや別に何か書き溜めて死のうとかは思ってませんよ。
ダーガーの心の闇が覗ける感じは辛いところもあります
が,行ってよかったです。
かなり心が動きました。
この展覧会の開催は明日7月16日(月)までです。
いつもレポートが遅くてすいません。
原美術館
http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
初めて行きましたがこじんまりしたいい美術館ですね。
わかりにくいかもしれませんが,御殿山交番の向かい
の道に入っていく。
元は個人邸宅だそうで。
個人邸宅としてはエラいことごっつい。
隣には美術館とは別の原さんちがあります。
カフェもあり,中庭を見ながらコーヒーを飲んでいい気分
でした。
また何かいい展示があれば是非行きたい。
原因はわかりませんが,こちらに限らず,ASAHI
ネットのブログ全般が開かなかったので,何か問題
が生じたか,メンテナンスでもしていたか。
なにしろ大変失礼致しました。
えーと,ヘンリー・ダーガー。
品川の原美術館でやっておりまして。
今回の展示は,まあおとなしい方のようですが,それ
でも何か不気味さというか,奥に潜む暗黒面は感じ
られます。
私が説明するのもどうかと思いますが,簡単に申し
上げますと,まずこの方は不幸な境遇で育ったのだ
そうです。
1892年生まれ。
3歳で母親が死去。
その後父親も患い,8歳でカトリック系の施設に入所。
更には感情障害の兆候をきたし,重度の精神遅滞
児童のための施設に収容されたとパンフレットにあり
ます。
ただ小さい頃の成績は良かったらしく,所謂知恵遅れ
ではなかったようです。
心を閉ざしてしまったのでしょうか。
17歳で施設を脱走。
簡単な労働をしつつ,言ってみれば引きこもりの人生
を81歳まで貫いたようであります。
少女に対する執着が強い。
これは,母親が出産で命を落としたらしく,その時生ま
れた妹は養女に出されたと。
その妹への思いに起因するのではないかとも考えられ
ているようです。
ま,なにしろ,1万5千ページに及ぶ「非現実の王国と
して知られる地における,ヴィヴィアン・ガールズの物
語,子供奴隷の反乱に起因するグランデコーアンジェリ
ニアン戦争の嵐の物語」というお話を書いた。本文だけ
でなくタイトルも長いですが。
とにかく書いた。
発表もなにもしていない。
そして,この物語をどうしても図解したくなったようです。
ところがまあ,いきなり絵を描くというのも大変だ。
そこで新聞や雑誌などのイラストや写真を収集し,それ
らをトレースして構成するという手法を採った。
今回展示されているのは,その絵の一部です。
輪郭線が完全にトレースの線でしてね。
間近に見て驚いたのですが,結局はトレースだろうが
なんだろうが表現したかったという気持ちが凄いなと。
ま,とにかく絵もたくさん描きました。
そのために,街をうろつき,新聞や雑誌などのゴミを
集めたそうです。
絵も勿論,発表するでもない。描きたいから描いた。
ダーガーは晩年老人ホームに入ったそうですが,その
時それまで住んでいた部屋の大家がこれらの作品を
見て驚いたと。
その大家さんはネイサン・ラーナーという写真家でもあ
る人ですが,こういう人が大家さんでなかったら,もっと
雑な人であったら,妙ないたずら書きぐらいにしか思わ
ず,あっさり捨てられていたかもしれません。
このラーナー夫妻によって,本人の意思と関係なく,
ダーガー作品が世に出たと。
まあそういうことでございます。
さて。
ヘンリー・ダーガーの絵について語る時,皆さんお書き
になるので書きたくはないのですが,避けて通る訳にも
いかんという事柄。
なにしろ少女の物語なので,絵にも少女がたくさん出て
くる。
全裸であったりもする。
その少女に何故か男性器が付いているという問題。
まあカトリック系の施設にも入り,まず敬虔なクリスチャ
ンであったようです。
その上やや変わった人でもあったようなので,女性器
を知らなかったのではないかという話が出てきます。
まあ生の全裸女体は見たことがなかったかもしれませ
んが,体の構造は流石に知っていたのではないかと。
じゃあなんで女の子にちんぽを生やすかと。
これがわからない。
うんと子供の頃,まだ性が未分化の幼児の頃,そういう
空想をしたのでしょうか。
普通は思春期になりますと,そのような小さい頃の空想
は吹き飛び,現実の女性器に向かって突き進むもので
すが。
まああまり女性に声をかけることもなさそうな人なので,
実際の女性の構造を知識として知った後も,子供の頃
自分が空想したイメージの方が良かったのかもしれな
い。
大人になってからも捨てられない空想だったのかもしれ
ない。
またダーガーの描く全裸少女の全てにちんぽが生えて
いる訳でもない。
となると物語の上での役柄で違うのかもしれない。
そこは物語を読んでませんのでわかりません。
結局謎だ。
例えば私がちんぽ付きの少女を描いたとしたら,皆さん
「あー,両性具有を描いたのね」とあっさり納得してもら
えることと思いますが,作者の人となりが人となりだと
いろいろ話がややこしくなります。
↓のページでいくつかダーガー作品が見られます。
http://www.hammergallery.com/Artists/darger/Darger.htm
ダーガーの描く少女は,なにしろ昔のアメリカの写真や
イラストが元ですから,レトロな感じもあり,「オズの魔法
使い」を髣髴とさせるような世界観なのですが(内容は
全く違いますが),そこは特異な境遇を辿ってきた人物
だけあって,明るく描いていても何かグロテスクであった
り,むしろ奇異さが引き立つ感じもします。
コラージュ作品などはそれが顕著で,愛らしい少女の
表情が一層ダーガーの心の闇を引き立てているように
思えます。
グロテスクでも,ヤン・シュヴァンクマイエルの場合は
ユーモアもあり,大人としてすんなり受け入れられます
が,ダーガー作品の場合は仮にユーモアの部分がある
としても,こちらの胸に突き刺さってくる痛みを感じます。
それにしても,おそらく発表するという発想すら全く無か
ったのでしょうねえ。
誰かに見せることもしなかったようです。
大家さんはずっと足の悪い老人としか見ていなかった
そうで。
ある衝動が起き,それを実行した。
つまり物語を書きたいから書き,絵も付けたいから描い
た。
本人の中では見事に完結しております。
これ以上でも以下でもなく,極めて純粋だ。
小説家になりたい,画家になりたいというのではないん
ですもんね。
自分にとって必要なことをしただけ。
こういう人もいるんですねえ。
変な言い方かもしれませんが,ちょっと勇気を貰いまし
た。
いや別に何か書き溜めて死のうとかは思ってませんよ。
ダーガーの心の闇が覗ける感じは辛いところもあります
が,行ってよかったです。
かなり心が動きました。
この展覧会の開催は明日7月16日(月)までです。
いつもレポートが遅くてすいません。
原美術館
http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
初めて行きましたがこじんまりしたいい美術館ですね。
わかりにくいかもしれませんが,御殿山交番の向かい
の道に入っていく。
元は個人邸宅だそうで。
個人邸宅としてはエラいことごっつい。
隣には美術館とは別の原さんちがあります。
カフェもあり,中庭を見ながらコーヒーを飲んでいい気分
でした。
また何かいい展示があれば是非行きたい。
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_ 世界びっくり 画像 動画 ニュース - 2007/07/17 21:30
[ベルリン 16日 ロイター] ドイツ南部リンダウで、バスに乗っていた20歳の女性販売員が“セクシーすぎるから”との理由で、運転手にバスを降りるように脅迫されるハプニングがあった。 バスに乗っていた女性販売員のデボラさんは、ビルド紙に当時の様子を語っている。「運転手は突然バスを停車させたのです。ドアを開け、彼は私にこう大声でどなったのです……。『ミラーを見る度、あんたの胸の谷間が気になってちっとも運転に集中できない。座っている場所を変えてくれなければ、バスから降りても
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