THE QUARTET ― 2007/10/16 21:10
そしてそしてメインイベント。
東京国際フォーラムにおける「THE QUARTET」公演。
ラッパ抜きの「VSOP」みたいなもんです。
Piano:Herbie Hancock
Sax:Wayne Shorter
Bass:Ron Carter
Drums:Jack DeJohnette
いやー,凄いメンバー。
私の一番好きなミュージシャンたちと言っていい。
ソニー・ロリンズが私の神様なら,仏様がウエイン・ショー
ター(笑)。
ドラムのトニー・ウイリアムスは死んじゃったから,そうな
るとジャック・ディジョネット。
60年代以降のマイルス・デイビスを支えたメンバー。
この人たちでないとできない音楽がありますからね。
ところがこれまたチケットが高くてですねえ。
下痢が止まらなくなるぐらい高い。
それでもこれを見逃したら一生後悔すると思いまして。
まあなんとか。
またこの人たち,もういい加減じじいですからね。
ハービー・ハンコックが67歳。
ウエイン・ショーターが74歳。
ロン・カーター70歳。
ジャック・ディジョネット65歳。
見られるものは見ておかないとぼちぼち危ない。
一応S席を取ったのですが,それでも2階席の中段辺り
になりまして,ステージが遠かったなあ。
そんなことだろうと思って双眼鏡を持参してましたけどね。
双眼鏡は大活躍でした。
19:00開演ということでしたが,10分ほど遅れてスター
ト。
ステージに入ってくるだけでかっこよかったですね。
それぞれ年齢を重ねて,飄々とした感じもしました。
ドラムから始まって,ベースが「びよーん」と入ってきたと
ころでぐにゃっと空間が歪んだ。
まずは「SO WHAT」。
なるほどそうきたかと。
わりと落ち着いたテンポでやってました。
一曲終わったところでハービーがマイクを持ってご挨拶。
「How are you?」ですって(笑)。
「コンバンワ」と日本語でも挨拶。
メンバー紹介もして,ジャック・ディジョネットが一番若い
とからかっているようでした。
それでも65歳ですからね。時間は残酷です。
次の曲が全く訳がわからなかったのですが,いい加減
演奏が続いていったところでベースが決まったモードパ
ターンを示してきた。
なんだ,「MAIDEN VOYAGE」だ。「処女航海」。
この人たちの本領発揮でしたね。
あまりにも自由。
音もソロの順番も関係ない。
それでも全体として崩壊しない。
なんでもありあり。何が来てもへっちゃら。
余裕ですね。
ウエイン・ショーターは74歳ということもあって,昔のよう
な「ボガーッ!」と大音量で吹く感じは流石になかったで
すが,結構元気でした。
前にも書きましたが,どうも70を過ぎてくるとサックスは
アンブシュアー(マウスピースを口でくわえる形)が厳しく
なってくるようですね。
元々ウエイン・ショーターは楽器の限界など気にしないで
吹き込んでしまうような人なので,かつての爆発的なプレ
イと比較してしまうと弱っている感じはありましたが,とに
かくこの人じゃないとダメな演奏のしかたというものがあ
る訳です。
最大限の自由な演奏と言いましょうか。
上手いだけじゃダメなんでしょうね。
その辺で,ハービーは,共演者としてウエイン・ショータ
ーを持ってくるのだと思います。
他に上手い人はいくらでもいるんですけどね。
ウエイン・ショーターがいいんです。ウエイン・ショーター
でないとダメなんです。
3曲目は「SEVEN STEPS TO HEAVEN」。
マイルスのアルバムのタイトルにもなっている曲。
わりとオーソドックスなスタイルの曲でもありますが,こ
こでウエイン・ショーターが結構ジャズっぽいフレーズを
吹きましたね(笑)。
ちょっと驚きました。ウエイン・ショーターは生で何度も
見てますが,こういうのは初めてかもしれない。
古いアルバムではそういうプレイもありますけど。
最初のベースパターンが始まったところで会場は大拍
手でした。
4曲目。「I THOUGHT ABOUT YOU」。
バラードですね。
前日の横浜公演では「MY FUNNY VALENTINE」
をやったそうですね。
これまたマイルスのアルバムで「MY FUNNY VAL
ENTINE」というのがありますが,そのアルバムに「I
THOUGHT ABOUT YOU」も入っております。
このアルバムのサックスはジョージ・コールマンですが,
録音は1964年ですよ。
43年前。
いやはや。
ここでもウエイン・ショーターがちょっとジャズっぽいフレ
ーズを出しました。
あ,ここでジャズっぽいフレーズと言っているのは,ジャ
ズでよく使われるようなフレーズということです。
あまりこういうことはしない人なんですが。
でも彼がポイントでそういうフレーズを使うと妙に新鮮
です。
5曲目。「AUNG SAN SUU KYI」。
「アウンサンスーチー」ですね。
ウエイン・ショーターの曲。
「1+1」というハービーとウエイン・ショーターのデュオ
アルバムに入ってます。
6曲目。「SOMEDAY MY PRINCE WILL COM
E」。
「いつか王子様が」。
イントロからなかなかウエイン・ショーターが入ってくれ
なくてですね(笑)。
完全に入るタイミングなのに入ってこない。
どこまで自由なんだよ!と突っ込みたくなるぐらいでし
たが。
やっとテーマを吹きだしたのはいいのですが,もしかし
たらテーマのメロディを忘れてしまっていたのかも(笑)。
或いは他の似た曲と混ざってしまっていたとか。
それでもみんな全然へっちゃらなんですよねえ。
ウエイン・ショーターはソプラノサックスは良かったです
ね。
テナーとソプラノを持ち替えるのですが,ソプラノを持っ
て吹くのかなと思うとソプラノを置いてテナーを持ったり
(笑)。
あ,テナーなんだなと思うとソプラノにしてみたり。
これは相変わらずでした。むしろ安心(笑)。
エンディングも,自分で終わるきっかけを作ろうとかは
全くしない(笑)。
ハービーもその辺は妖怪ですから,結局ロン・カーター
とジャック・ディジョネットで終わるパターンが多かった
です。
エンディングがまたどの曲も凄く長いんですよ。
普通の一曲分ぐらい長い(笑)。
普通なら演奏していて耐えられないほどの長さで,な
んとか早く終わらせようと誰かがするものです。
普通はサックスがいるならサックスがそういうきっかけ
を出します(笑)。
でもこの人たちはそんなの全く気にしないのですね。
あーここで終わるかなあと思うとハービーがまた変な
パターンを出してきて終われなくなったり(笑)。
へっちゃらでどんどん長くなる。
あれはあれで凄いです。まあ真似はできませんが
(笑)。
7曲目。「EIGHTY ONE」。
これもマイルスバンドの曲ですね。
そういう構成であったということであります。
マイルスがやってないのは5曲目の「AUNG SAN
SUU KYI」だけですもんね。
「EIGHTY ONE」はドラムの遊びもあり,楽しい演奏
になりました。
8曲目はベースのソロで始まる。
途中で調がずれる強力な「Take Me Out To The Ball
Game」や(笑),「SAMBA DE ORPHEE」などを織り交
ぜながら,「ALL BLUES」へ。
これもエンディングが長かったなあ(笑)。
これで公演は終了。
しかし拍手は鳴り止まず。
当然アンコール。
アンコールは「FOOTPRINTS」。
ウエイン・ショーターの曲。
アンコールということだからか,わりとあっさり終わって
ました。
全部で2時間ほどのステージ。
総じてリラックスした雰囲気で,力むこともなく,大人だ
なあと。
いい年のじいさんが集まって遊んでる感じで。
それがとてもかっこいい。
ウエイン・ショーターはやや衰えを感じさせましたが,
他はまだバリバリ。
そのウエイン・ショーターにしても,彼のスタイルがそう
なのかもしれませんが,衰えは衰えなりに受け止めて
そこでのプレイにしてしまうような気がします。
衰えも一つのスタイルにしてしまう自由さ(笑)。
音がよれる,高い音が出ない,でも全然へっちゃらと
(笑)。
なかなかこういう人はおりません。
チケットは高くて痛かったですけど,これは行ってよかっ
た。
勇気づけられました。
皆さん長生きしてほしいものと思います。
東京国際フォーラムにおける「THE QUARTET」公演。
ラッパ抜きの「VSOP」みたいなもんです。
Piano:Herbie Hancock
Sax:Wayne Shorter
Bass:Ron Carter
Drums:Jack DeJohnette
いやー,凄いメンバー。
私の一番好きなミュージシャンたちと言っていい。
ソニー・ロリンズが私の神様なら,仏様がウエイン・ショー
ター(笑)。
ドラムのトニー・ウイリアムスは死んじゃったから,そうな
るとジャック・ディジョネット。
60年代以降のマイルス・デイビスを支えたメンバー。
この人たちでないとできない音楽がありますからね。
ところがこれまたチケットが高くてですねえ。
下痢が止まらなくなるぐらい高い。
それでもこれを見逃したら一生後悔すると思いまして。
まあなんとか。
またこの人たち,もういい加減じじいですからね。
ハービー・ハンコックが67歳。
ウエイン・ショーターが74歳。
ロン・カーター70歳。
ジャック・ディジョネット65歳。
見られるものは見ておかないとぼちぼち危ない。
一応S席を取ったのですが,それでも2階席の中段辺り
になりまして,ステージが遠かったなあ。
そんなことだろうと思って双眼鏡を持参してましたけどね。
双眼鏡は大活躍でした。
19:00開演ということでしたが,10分ほど遅れてスター
ト。
ステージに入ってくるだけでかっこよかったですね。
それぞれ年齢を重ねて,飄々とした感じもしました。
ドラムから始まって,ベースが「びよーん」と入ってきたと
ころでぐにゃっと空間が歪んだ。
まずは「SO WHAT」。
なるほどそうきたかと。
わりと落ち着いたテンポでやってました。
一曲終わったところでハービーがマイクを持ってご挨拶。
「How are you?」ですって(笑)。
「コンバンワ」と日本語でも挨拶。
メンバー紹介もして,ジャック・ディジョネットが一番若い
とからかっているようでした。
それでも65歳ですからね。時間は残酷です。
次の曲が全く訳がわからなかったのですが,いい加減
演奏が続いていったところでベースが決まったモードパ
ターンを示してきた。
なんだ,「MAIDEN VOYAGE」だ。「処女航海」。
この人たちの本領発揮でしたね。
あまりにも自由。
音もソロの順番も関係ない。
それでも全体として崩壊しない。
なんでもありあり。何が来てもへっちゃら。
余裕ですね。
ウエイン・ショーターは74歳ということもあって,昔のよう
な「ボガーッ!」と大音量で吹く感じは流石になかったで
すが,結構元気でした。
前にも書きましたが,どうも70を過ぎてくるとサックスは
アンブシュアー(マウスピースを口でくわえる形)が厳しく
なってくるようですね。
元々ウエイン・ショーターは楽器の限界など気にしないで
吹き込んでしまうような人なので,かつての爆発的なプレ
イと比較してしまうと弱っている感じはありましたが,とに
かくこの人じゃないとダメな演奏のしかたというものがあ
る訳です。
最大限の自由な演奏と言いましょうか。
上手いだけじゃダメなんでしょうね。
その辺で,ハービーは,共演者としてウエイン・ショータ
ーを持ってくるのだと思います。
他に上手い人はいくらでもいるんですけどね。
ウエイン・ショーターがいいんです。ウエイン・ショーター
でないとダメなんです。
3曲目は「SEVEN STEPS TO HEAVEN」。
マイルスのアルバムのタイトルにもなっている曲。
わりとオーソドックスなスタイルの曲でもありますが,こ
こでウエイン・ショーターが結構ジャズっぽいフレーズを
吹きましたね(笑)。
ちょっと驚きました。ウエイン・ショーターは生で何度も
見てますが,こういうのは初めてかもしれない。
古いアルバムではそういうプレイもありますけど。
最初のベースパターンが始まったところで会場は大拍
手でした。
4曲目。「I THOUGHT ABOUT YOU」。
バラードですね。
前日の横浜公演では「MY FUNNY VALENTINE」
をやったそうですね。
これまたマイルスのアルバムで「MY FUNNY VAL
ENTINE」というのがありますが,そのアルバムに「I
THOUGHT ABOUT YOU」も入っております。
このアルバムのサックスはジョージ・コールマンですが,
録音は1964年ですよ。
43年前。
いやはや。
ここでもウエイン・ショーターがちょっとジャズっぽいフレ
ーズを出しました。
あ,ここでジャズっぽいフレーズと言っているのは,ジャ
ズでよく使われるようなフレーズということです。
あまりこういうことはしない人なんですが。
でも彼がポイントでそういうフレーズを使うと妙に新鮮
です。
5曲目。「AUNG SAN SUU KYI」。
「アウンサンスーチー」ですね。
ウエイン・ショーターの曲。
「1+1」というハービーとウエイン・ショーターのデュオ
アルバムに入ってます。
6曲目。「SOMEDAY MY PRINCE WILL COM
E」。
「いつか王子様が」。
イントロからなかなかウエイン・ショーターが入ってくれ
なくてですね(笑)。
完全に入るタイミングなのに入ってこない。
どこまで自由なんだよ!と突っ込みたくなるぐらいでし
たが。
やっとテーマを吹きだしたのはいいのですが,もしかし
たらテーマのメロディを忘れてしまっていたのかも(笑)。
或いは他の似た曲と混ざってしまっていたとか。
それでもみんな全然へっちゃらなんですよねえ。
ウエイン・ショーターはソプラノサックスは良かったです
ね。
テナーとソプラノを持ち替えるのですが,ソプラノを持っ
て吹くのかなと思うとソプラノを置いてテナーを持ったり
(笑)。
あ,テナーなんだなと思うとソプラノにしてみたり。
これは相変わらずでした。むしろ安心(笑)。
エンディングも,自分で終わるきっかけを作ろうとかは
全くしない(笑)。
ハービーもその辺は妖怪ですから,結局ロン・カーター
とジャック・ディジョネットで終わるパターンが多かった
です。
エンディングがまたどの曲も凄く長いんですよ。
普通の一曲分ぐらい長い(笑)。
普通なら演奏していて耐えられないほどの長さで,な
んとか早く終わらせようと誰かがするものです。
普通はサックスがいるならサックスがそういうきっかけ
を出します(笑)。
でもこの人たちはそんなの全く気にしないのですね。
あーここで終わるかなあと思うとハービーがまた変な
パターンを出してきて終われなくなったり(笑)。
へっちゃらでどんどん長くなる。
あれはあれで凄いです。まあ真似はできませんが
(笑)。
7曲目。「EIGHTY ONE」。
これもマイルスバンドの曲ですね。
そういう構成であったということであります。
マイルスがやってないのは5曲目の「AUNG SAN
SUU KYI」だけですもんね。
「EIGHTY ONE」はドラムの遊びもあり,楽しい演奏
になりました。
8曲目はベースのソロで始まる。
途中で調がずれる強力な「Take Me Out To The Ball
Game」や(笑),「SAMBA DE ORPHEE」などを織り交
ぜながら,「ALL BLUES」へ。
これもエンディングが長かったなあ(笑)。
これで公演は終了。
しかし拍手は鳴り止まず。
当然アンコール。
アンコールは「FOOTPRINTS」。
ウエイン・ショーターの曲。
アンコールということだからか,わりとあっさり終わって
ました。
全部で2時間ほどのステージ。
総じてリラックスした雰囲気で,力むこともなく,大人だ
なあと。
いい年のじいさんが集まって遊んでる感じで。
それがとてもかっこいい。
ウエイン・ショーターはやや衰えを感じさせましたが,
他はまだバリバリ。
そのウエイン・ショーターにしても,彼のスタイルがそう
なのかもしれませんが,衰えは衰えなりに受け止めて
そこでのプレイにしてしまうような気がします。
衰えも一つのスタイルにしてしまう自由さ(笑)。
音がよれる,高い音が出ない,でも全然へっちゃらと
(笑)。
なかなかこういう人はおりません。
チケットは高くて痛かったですけど,これは行ってよかっ
た。
勇気づけられました。
皆さん長生きしてほしいものと思います。
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