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教員免許更新制の行方2010/09/21 05:44

私は政治的な話は意識して書かないようにしています。
ガラではないからです。
しかしこの件については,私自身関わりが無いこともないので,注視しているところであります。
ちょっと整理してみたいと思います。

教員免許更新制が廃止されそうだという話は,私などの耳にも入っておりました。
この制度は,07年6月に法として成立し,09年4月から本格的にスタート。
ところが同年8月に衆院選で民主党が勝ち,更新制は廃止しちゃうよと。
そのままとんとんと進むかと思いきや,こないだの参院選で民主党が敗北。
更新制廃止の流れが澱んでしまった。
更新の対象年齢の教員は,廃止なら楽だと思っていたものが,ここへきてわからなくなってきた。
講習料は3万円ぐらいらしいですが,これは教員の自己負担ですし,金のことより時間を取られるのが困りますわね。
講習を受けなくて済むなら,それに越したことはない。
ずっと成り行きを見守っていては,免許の失効という事態も起きかねないので,文部科学省から注意喚起の文書が出された。
その文書は文科省のサイトで読むことができます。
政局で振り回されるというのも困った話で。
廃止するなら政局などに左右されず,きっちり廃止の見通しを示してくれないと。
そうは言ったけど,すぐには廃止できないようだというのであれば,更新制の見直しを表明した大臣,副大臣クラスが説明しなきゃダメだろう。
今の状態は,「廃止か存続かはわからないけれど,法改正されるまでは更新しなきゃダメだから,免許が失効しないように更新講習受けてね」ぐらいの感じでしょうか。
それは言われなくてもわかってる。
そうじゃなくて,年度内の廃止は無いなら無いと言ってくれれば,皆さん仕方なしにでもすぐに受講手続きをする。
曖昧だから混乱する。
広げた風呂敷が自分で畳めなくなってる印象ですね。

この制度が成立した背景には,教員の質の低下が叫ばれ,また教員の不祥事が相次いだことがあろうかと思います。
ところがこの更新制の目的は,
 その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知   
 識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持 って教壇に立ち、社会の尊 
 敬と信頼を得ることを目指す
ものであり,
 不適格教員を排除することを直接の目的とするものではない
のだそうです。
つまり試験で成績の悪い教員を切ったりとかではない。
実際何をやるのかと言えば,大学などで開設される講習を受けるんですね。
「教育の最新事情に関する事項(12時間以上)」と「教科指導,生徒指導その他教育の充実に関する事項(18時間以上)」の合わせて30時間程度を受講する。
こんなのバカでも変態でも実態をバラさずに済ますことができます。
勿論仕方なしに受けた講座からも,新しい発見や学びを得る教員もいることでしょう。
しかしもう一つ意味がわからない更新ではあります。

この制度で得をするのは誰か。
講座を開く大学などはちょっとした収入源にはなるか。
でも30時間で3万円なら1時間1000円でしょ。
微妙だな。
50人,100人,それ以上と受講者が集まるところならホクホクかもしれないけれど,あまり乗り気でないところもあるような気がする。
講習を行っているのは大学だけではありません。
ほとんどは大学ですが,他にも各自治体の教育委員会とか指定教員養成機関でもやっている。
そして更に,皆様おなじみの字面がここで登場するのですね。
「独立行政法人」「公益法人」というヤツでございます。
「免許状更新講習認定大学等一覧」というリストがありまして,これには複数の大学の共催も含めて400の認定された施設が書いてある。
「独立行政法人」「公益法人」はその中の19。
場所は17が東京。他は茨城と神奈川。
全てを調べてはいませんが,ちょっと書いていきましょうか。
「独立行政法人教員研修センター」。ちなみに理事長,理事は文科省OB。監事は大蔵省OB。
「独立行政法人科学技術振興機構」。ちなみに理事が文科省OB。
「独立行政法人日本芸術文化振興会」。ちなみに(しつこいか)理事二人が文部省,文科省OB。
「独立行政法人国立青少年教育振興機構」。理事長が文科省OB。理事二人が文部省OB。
「財団法人音楽鑑賞教育振興会」。常務理事が文部省OB。
ざっと見たところでこんな感じ。
面白いところでも更新講習をやってましてね。
「社団法人日本一輪車協会」ってとこでもやっている。
まあ小学校なんかで一輪車の指導をしているところは多いようですけどね。
他にも「社団法人日本ネイチャーゲーム協会」とか,「財団法人日本ボールルームダンス連盟」とか。
勿論保健体育の教員向けなんでしょうが。
「ダンス連盟」の会長は文部省の事務次官にまでなった人ですね。
いい悪いを言っているのではないですよ。
これらの各法人は,教員免許更新制に関わらず存在する法人で(いや,実は講習の窓口みたいな訳のわからない法人があるんじゃないかと疑って調べてみたのですが,今のところ見当たらない。ご存知の方はお教え下さい),その内容がどうとか,また確かに天下り的なことにもなっているようですが,それがどうこう言うつもりも無い。
しかしこれを見れば,文科省は,教員免許更新制を廃止したくはないだろうなと。
そう思わざるを得ない。
だから,「法改正までは講習受けないと失効になっちゃうよ」という言い方になる。
政局で廃止が流れるのはむしろ歓迎なんでしょう。
更新制継続で得なのは,大学等教育機関よりも文科省なんだろうなと。

では更新制継続で損なのは誰か。
これは前述しましたが,教員と,その教員を抱える学校ですね。また講習に行っている間,当然教育サービスは希薄になるでしょうから,児童・生徒も迷惑する。
30時間も取られたら大変でしょう。勤務する学校が都市部で,近くに講習の施設があればまだいいかもしれませんが,
地方だとえらい時間を取られそうだ。部活動の指導をしている教員も多いでしょうし,10年に一度とは言え,困りますわな。
講習に行っている穴を埋めるのもそう簡単なことではないでしょう。
で,その講習が,これも前述のように,何か物凄く高いハードルとかなら必死になってやらねばならんでしょうし,極めて価値の高い情報を得られるとかいうなら受講する意味があるかもしれませんが,どうなんでしょ。
これは私は実際どんなものか経験してはおりませんので,経験された方のご意見を聞きたいところですが,新聞紙上の経験談を読む限り,評価は低いようです。まあそれは仕方なしに受講している人の意見ですから,話半分にしてもですね。
損するのは免許の更新が必要な教育現場にいる人たちと。
他にはいなさそうですね。
ですから,教育現場からは自民党政権で成立したこの制度には反対と。これは当然。
で,政権が変わりまして,民主党の支持基盤として連合がありますが,日本教職員組合も連合に加盟している。
そっちから,更新制をなんとかしてくれとあったのでしょうね。
これは09年の衆院選の民主党マニフェストにも「教員の資質向上のため,教員免許制度を抜本的に見直す」とは確かに書いてあります。
ところがこの直後の文章は今回初めて読んだのですが,こう続く。
「教員の養成課程は6年制(修士)とし,養成と研修の充実を図る」だそうです。
更新制廃止のニュアンスは薄い気がしますが。
しかし日教組としては,6年制云々じゃなくて,更新制の廃止ですわね。欲しいのは。
ま,なにしろ政権交代後に,川端という文科省大臣が見直しを表明し(これはマニフェストに沿っている),鈴木という副大臣が更新制廃止を含む抜本的見直しを11年度にも行いたいと,一歩踏み込んだ意向を示した。だいぶやいやいやられたのではないでしょうか。
それが去年のことで,今年の6月に更新制をどうすべきか。正確には「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」大臣から中央教育審議会に諮問が行われた。
これにより,着々と更新制廃止に向かうかと思われたが,翌月の参院選では,ま,いろいろあって,民主党がコケたのはご存知の通り。
で,どうなるの?というところであります。
ちなみに参院選の時の民主党のマニフェストをばーっと読みましたが,教員免許制度についての記述は無いようです。
更新制を廃止して喜ぶのは教員だけですし,それよりも「無償化」とか,広く有権者に響くキャッチな政策を盛り込んでいる印象です。

とにかく,ごちゃごちゃ書いてきて,繰り返しにもなりますが,現在の更新制に教員の資質向上につながるようなメリットがあるとはどうしても思えない。
しかし教員免許というのは都道府県の教育委員会が出しておりますが,国家資格であり,更新講習を受けろと言われれば受けなければしょうがない。やれと言うならやる。
それはいいのだが,どちらにしても,政局の混乱が教育現場を巻き込むというのは実に許しがたい。
借金をして,「明日返す」「ごめん,やっぱり返せそうもない」と言うのと大差無いのではないか。
明日返せないならそのようなことを言うべきではない。当面返せないなら返せないで,いつ返すのか明確にしなければ言い訳にもならない。
責任のせの字もない。
そんな連中が改革する教育とは一体何だ。
勿論この先,ちゃんと仕事をしてくれる可能性もある訳で,そう願いたいものですが。
引き続き注視したいと思います。つまらない話を長々と失礼しました。


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